古今東西

言語化

言語化とは…?
感情や感覚、直感的なイメージを言葉にし、伝えること。
自分の思い・考えを、相手に伝達するための手段であり、自身が理解されるために必要なこと。
自分のイメージや思考を、言葉にするため、
そして他者により正確に伝えるためには、相応の語彙力(ごいりょく)が必要となる。
どんなに豊かな感情や、深い思案があったとしても、
自分の語彙の範囲でしか言葉にすることはできない。
『古今東西』は、言語化という課題と常に共にあるコラムニストの感情と思考を読み解くことで、
まずは、思いをことばやかたちにする、すなわち言語化することの大切さを学ぶコーナーである。

つた-える【伝える】《他下一》

❶そのものが媒体となって、他のものに移す。
「金属はよく電流をー・える」「作者の意図を読者にー・える」❷ことばで知らせる。「出発の日時をー・える」「ニュースをー・える」❸仲立ちをとおして告げ知らせる。伝言する。「彼には君からー・えてくれ」類語 言付ける。❹先人からことばを受けついで今に残す。言い伝える。「沼に竜がすむとー・える」❺代々受けついできて、あとの者に・残す(教え授ける)。「昔の情緒を今にー・える町」❻〔ある物・物事を〕よそからもってきて、そこに届かせる。もたらす。「海外から新技術をー・える」
『学研 現代新国語辞典 改訂第六版』(2020)株式会社 学研プラス

column_No. 07

荒井 悠吏 Yuri Arai

飲食店経営者、飲食コンサルタント

2016年、『神⽥餃⼦居酒屋 WARASHIBE GYOZA』の創業以来、様々な飲⾷店で商品開発、情報マーケティングを⾏う。
開発された様々な商品は販売開始の度に、数々のメディアに特集され、ニューヨーク発の世界的ビジネス媒体『Bloomberg』では、「鉄板餃子フォンデュ」が世界のベストフォンデュに選ばれる。
ジャンクフードを中⼼としたSNSを活⽤しての飲⾷店宣伝先駆者を担っている。

掲載実績
【テレビ】
ヒルナンデス(⽇本テレビ系)
王様のブランチ(TBS系)
ZIP!(⽇本テレビ系)
有吉ゼミ(⽇本テレビ系) 他多数

【雑誌・Webマガジン】
tokyo walker
ウォーカープラス
SmaetLASH 他多数

【海外】
⽉間 20億Viewを誇る世界的SNSメディア
Tastemade Travel
Tastemade Japan
ニューヨーク発の世界的ビジネス媒体
Bloomberg

旨いものを作ること

「⻑年、地域のお客様に愛される店となること」
本来、飲⾷店の⽬指すところは、こうだったように思います。
しかし、最近はそんな飲⾷店のあり⽅が、⼤きく変わってきているように私の⽬には映ります。多くの著名⼈が副業として飲⾷店を経営したり、これまで全く携わってこなかった⼈が飲⾷という世界に希望を抱いたり。もちろん全てではありませんが、飲⾷を経営する者の⽬線が〝⽣き様〟から〝稼ぐ〝こと重視にシフトしていっているように感じています。ちなみに、私⾃⾝も「これまで携わってこなかった⼈が飲⾷という世界に希望を抱いた」⼀⼈です。(笑)
元々キャンプが趣味で、多少なりとも料理をしていたということもありますが、⾷べている⼈の表情を間近で⾒られ、ダイレクトに反応をもらえることに漠然としたやりがいを感じ飲⾷の世界に⾶び込みました。私⾃⾝は、消費者として、作り⼿として、双⽅が求めている答えを探すことに魅⼒を感じています。


商品開発で⼤事にしていることは、「旨いものを作る」ことです。
旨いものを作れば、⼈は喜んでくれるし、お⾦も⼊るし、全て上⼿くいきますからね。ただ、この「旨いもの」というのがとても難しい。ここからは私の⾔語化⼒が試されそうです。
メニュー作りはいつも友⼈を⼀⼈思い浮かべることから始めます。「あいつは⾟いものがすきだから、⾟いものを作ってみる」
頭に思い浮かべた⼀⼈の友⼈を満⾜させられるよう、味のバランスやボリュームなどを調整します。そして、その料理を⾷べてくれた友⼈の印象に残るよう、少しだけ⾃分らしさを加えます。
「美味しい」その⾔葉をもらっても、疑うこと。
いくら友達でも、家族でも、気を使わない、本当に120点の美味しいが相⼿に伝わるまで、ひたすら探究です。
その⼈が美味しいと⾔っていたお店を全部めぐったりして。
そこまでしてやっと⼀つのメニューが完成した時、120点の笑顔でお互いに「ありがとう」を伝えたくなるでしょう。
ちなみに値段はその時互いに気を使わずもらえる友⼈価格をそのままお店の⾦額に。


話は戻りますが、なぜ〝飲⾷で稼ぐ〟ということが増えているのかというと、何よりも「IT活⽤が加速する時代だから」だと思います。ひと昔前まではネットに投資をすれば集客が可能でしたし、いまではSNSをいかに有効活⽤できるかが重要な集客の要となっています。流れに乗れる⼈は⽣き残り、乗り遅れれば衰退していく。
いつの時代も飲⾷の流⾏における”情報拡散”は上位互換となる⼿段が存在し、いかにその⼿段を活かせるかが結果とつながっているからです。

そこで重要となるのが、その店の独⾃性をいかに伝えられるかという差別化です。
私が最初の飲⾷店を開業した時、お客様が店を探す⽅法としてGoogle検索はもちろん、⼝コミサイトが主流で、SNSによる消費者個⼈の情報発信が出始めたころでした。
私⾃⾝、インスタグラムで地域や品⽬を検索し探すことが⾃然になる中、⼀つの気づきが⽣まれました。
検索する側は地名、品名含めて⼤きなカテゴリーで検索をかけるのに、店舗側は商品の固有名や店舗名でハッシュタグを設定していることに。
1つ例を挙げると、私が創業し現在はコンサルタントとして展開している『神⽥餃⼦居酒屋WARASHIBE GYOZA』のメニューに、「鉄板餃子フォンデュ」というのがあります。
たっぷりのチーズの上に餃⼦を並べ鉄板で⾷べる「チーズ×餃⼦」の組み合わせは、今でこそ様々な飲⾷店で⾒かけるようになりましたが、当時は誰も知らないメニューでした。
誰も知らないのに#鉄板餃子フォンデュなんて検索する⼈はいませんよね。そもそも「instagram=写真を投稿するツール」という当たり前が、利⽤者と発信者の中でハッシュタグの活⽤⽅法のすれ違いを⽣んでいました。
さらに検索機能の中は【トップ・最近】と分かれているので、拡散してくれる⼈数だけでなくフォロワーじゃない⼈々の検索結果にも反映されます。
「これを利⽤しない⼿はないだろう」
そう思い、飲⾷店の経営にインスタを活⽤することを考えました。
そこで、このメニューを世の中に広めるために、インスタに”#餃⼦”のハッシュタグ付きで写真をアップしてくれたら、フォロワーの数だけ値引きをするというサービスをして拡散。
ここで⼤事なことは、割引が投稿することのメインではなくて、
「この料理の写真を撮りたい、ついでに割引も」になること。
みんなに⾒せたい写真を投稿するSNSだから、⾃分が本当にときめくものだけ投稿したいですよね。
そして当時まだ飲⾷業界でインスタの活⽤が主だってされていないなか、餃⼦が⾷べたい⼈の⽬に付く餃⼦の写真を、多くの⼈が不特定多数に発信すること。まさに「インスタ映え」によってブームを作り出すことを PR戦略の中⼼として、商品開発から店舗、メニューの認知拡⼤に成功しました。
今ではそんなこと?と思うようなことですよね。


旨いものを作りたい

このように「インスタ映え」による恩恵を得ている私ですが、実のところ「インスタ映え」という⾔葉には違和感を覚えます。
もちろん昔から料理を”⾒て美味しい”と感じることは、誰もが経験してきたはず。
しかし、SNSという個⼈が簡単に情報発信できるコミュニケーションツールが登場したことで、SNSを通した⾃分⾃⾝のブランディングが意識されはじめました。

その結果、インスタ映えという⾔葉が、⾒栄えだけで料理の価値を決めてしまうことにも繋がり、本来の料理の楽しみ⽅を変えてしまったように思います。料理の⾒た⽬は⼤切ですが、それは料理全体のごく⼀部の要素でしかありません。料理には【⾒た⽬・味・⾹り・空間・時間・⾳・値段】など多くの⻭⾞があり、様々な噛み合わせがあります。
本当に「旨いもの」をつくるには、その様々な噛み合わせからベストを探らなければなりません。この試⾏錯誤があるからこそ、料理は作ることも⾷べることも無限に楽しめるんだと思います。

だから私はこれからも「旨いものを作りたい」。
これに全てが詰まってる。