MAIKO×田沢あかね 気持ちを“伝える”ための美しいことば選び4 MAIKO×田沢あかね 気持ちを“伝える”ための美しいことば選び4
#04

今回の対談をおこなうにあたり、『言語化タイムズ』の読者から
“日常の会話”をテーマとしたメッセージや質問を募集した。
話し方ひとつで人に与える印象は大きく変わる。
日々の会話を円滑にし、人間関係を良好に保つ“美しいことば選び”について、
元Julietボーカル・MAIKOと『ことば選び辞典®︎』シリーズ担当編集者・田沢あかねが語った“ことば”を、全4回で紹介。
最終回となる今回は会話のコツに限らず、読者から届いた“ことば選び”にまつわる質問にMAIKOと田沢が答える。
※読者から届いた質問は、一部を除きそのまま掲載した。

4回にわたって“日常会話に役立つことば選び”について紹介をしてきたMAIKOと田沢あかね。最終回も引き続き読者からの質問をもとに、“ことば”を使った表現について考えていく。これまでとは少々毛色の違った質問に、二人はどんな答えを返すのだろうか?

MAIKO:

それではさっそく質問を見てみましょう。

Q. 女性の口説き方を教えてください!どんな話し方をすれば魅力的な男性だと感じてもらえますか?

MAIKO:

衝撃的な質問ですね(笑)。

田沢あかね(以下田沢):

ことばの選び方というテーマからしたら重要かもしれません。恋愛はコミュニケーションですし…。

MAIKO:

田沢さんは男性の言葉づかいを気にしますか?

⽥沢:

そうですね、多少は気になりますね。どんなことばを選ぶのかによって、心惹かれるか否かということはあります。

MAIKO:

キレイな言葉づかいが良いんですか?

⽥沢:

うーん、キレイというと語弊がありますね。その場に応じた言葉づかいができることを重視しています。

MAIKO:

いきなり歌詞みたいな言葉で話されたら引いちゃうかも(笑)。

⽥沢:

そうですね(笑)。私自身は辞典の編集者ということもあり、辞典を引きながら「この恋心をどう表そうかな…」と考えることはあります。お相手次第で表現は変わってきますよね。情熱的な男性なら「懸想(けそう)しています」と強い表現で伝えてみるとか。※異性に思いをかけること

MAIKO:

私はその人らしいしゃべり方をしてほしいなと思いますね。愛情表現にしても「好きです」と言うのが似合うのか、「愛してる」とまで言えちゃうのか…。「愛してる」って言われたら「ウソでしょ!」って思っちゃう人いるんです! 

⽥沢:

ひどくないですか(笑)。

MAIKO:

いやこれは本当に申し訳ないんですけど、その言葉が似合うかどうかってあるんですよ!あんまり身構えて言葉を用意しすぎると恋愛に関しては後が苦しくなるだけだと思いますので、自分らしさを大切にしてほしいですね。

Q. しゃべりが上手な有名人・芸能人はいますか?

⽥沢:

私は主に文字を追いかけているのであまり詳しくないんですよね…。MAIKOさんの周りの方はどうですか?

MAIKO:

ワイドショーを見ていてミヤネさんは本当にしゃべりが上手いなと思います。コーナーとCMの合間に自分の考えを整理して、CM明けまで見てもらえるように視聴者の気を引くワードを入れるとか、すごい技術。

⽥沢:

話し方ということであれば、辞典編集でお世話になっている金田一秀穂(きんだいちひでほ)先生はすごいです。言葉づかいはもちろんですし、「何分で」とお願いすると、その時間ピッタリにお話をまとめてくださるんですよ。※日本の言語学者。

MAIKO:

それはすごい。サッカーとか野球とか、試合の直後で疲れ切っているときにヒーローインタビューでしっかり話ができるの、いつも感心しちゃいますね。

⽥沢:

私はフィギュアスケートを観るのが好きでよく観戦しますが、試合直後にマイクを向けられて、ちゃんとした言葉で話せるのはすごいですよね。短い時間で自分の考えをまとめて、その選手らしい言葉で適切に語れるという。浅田真央(あさだまお)選手は洗練された言葉づかいというよりは、天真爛漫な性格がよく出ているように感じます。。「トリプルアクセルに声をかけるとしたら」と問われて、「なんでもっと簡単に飛ばせてくれないの」って発言とか…。まるでトリプルアクセルというキャラクターがいるかのような表現がまた魅力になっていますよね。

MAIKO:

もう何度か言っていますが、自分らしさって大事ですよね。地方出身の方も無理やり標準語を使わなくてもいいと思うんですよ。関西弁でも博多弁でも、聞いてる人に伝わるなら自然な言葉で語ればいいんです。逆に「地方出身だけど標準語の方が自分っぽいな」と思うならそれでいいし。
田沢さんは関西弁の男性に惹かれてしまった経験とかありませんか?(笑)

⽥沢:

…正直ありますよね。普段は共通語で話してるのに、ぽろっと方言が出ると「今、素で話してくれてるのかも」と思うことはあります。恥ずかしい話ですが…(笑)。

MAIKO:

あるんですね(笑)。話を戻すと、どんな場合でもまず自分を知ることがことば選びの第一歩なんじゃないでしょうか。

⽥沢:

聞き手にわかりやすく自分の魅力を伝えるためには、自分を知り、伝える相手を知り、その上でどんな言葉を選ぶかが大切ですね。

Q. 会話をするときは本人の個性を出した方が良いのでしょうか?

⽥沢:

私はそう思います。どこかで聞いたような言葉だけを使った画一的なしゃべり方では、たとえどんなに内容が良くても、その人らしさやその人固有の魅力が伝わらないと思いますね。

MAIKO:

そうそう。自分らしさがないと言いたいことは伝わらない。

⽥沢:

メッセージが伝わってこないと、聞いている側も「応援したい」と思えませんしね。

MAIKO:

内容が同じでもその人らしい言葉づかいでないと、せっかく用意した言葉が死んでしまうんですよね。“らしさ”を出すのが会話の一番のコツだと思います。

⽥沢:

私はもっぱら文章ですが、原稿を書いているときは良いなと思っていても、あとで読み返してみると「なんか私らしくないな」と感じることもあります。テストではないので“正解”はありませんが、しっくりこないときは表現を見直すと良いかもしれません。

MAIKO:

他人のしゃべりを聞いていると無意識に他人の表現に寄ってしまうことがあります。しゃべり方や、間の取り方とか。自分のスタイルができるまで練習するのがオススメです。

人に伝わる“ことば選び”をするためには、小手先のテクニックよりも“自分らしさ”を追求することが大切だ。どのような表現が自分らしいのかを知るためには、まず自分自身についてよく思いを巡らせることが必要になる。どんな会話の場面でも慌てることがないように、一度じっくり自分と向き合う時間を持つのも良いだろう。

“伝わる表現”のヒントは日常のそこかしこに隠れている。
学ぶ意識で目を向ければ、日ごろ触れている様々な媒体すべてが良き師となって、あなたの“ことば選び”を磨き上げてくれるだろう。

その“師”のひとつとして、『ことば選び辞典』シリーズが役に立つことは言うまでもない――。

Profile

  • 田沢あかね

    2014年、学研教育出版(現・学研プラス)に入社。80万部以上というコンパクト辞典としては異例の大ヒットを飛ばした『ことば選び辞典®︎』シリーズの編集を担当する。静岡県出身。母校である京都大学大学院では、言葉への興味から『平家物語』『保元物語』の研究を深める。幼いころは文字を読むことが好きすぎて、食品パッケージや電話帳までひたすら読みこんでいたという重度の蠹書蟲。好きなものは、古典と妖怪とコミック全般。

    2014年、学研教育出版(現・学研プラス)に入社。80万部以上というコンパクト辞典としては異例の大ヒットを飛ばした『ことば選び辞典®︎』シリーズの編集を担当する。静岡県出身。母校である京都大学大学院では、言葉への興味から『平家物語』『保元物語』の研究を深める。幼いころは文字を読むことが好きすぎて、食品パッケージや電話帳までひたすら読みこんでいたという重度の蠹書蟲。好きなものは、古典と妖怪とコミック全般。

  • MAIKO

    2009年Julietのメンバーとしてデビュー。同年リリースした「ナツラブ」「フユラブ」は多くの若者の恋心の代弁歌として大ヒット。2018年、約10年間のグループ活動を終え、現在はアーティストのレコーディングコーラスや、サーフ系ファッションブランドROXY GIRLSとして様々なイベントへ参加中。

    2009年Julietのメンバーとしてデビュー。同年リリースした「ナツラブ」「フユラブ」は多くの若者の恋心の代弁歌として大ヒット。2018年、約10年間のグループ活動を終え、現在はアーティストのレコーディングコーラスや、サーフ系ファッションブランドROXY GIRLSとして様々なイベントへ参加中。

『ことば選び辞典®︎』シリーズ

『ことば選び辞典®︎』シリーズ

シリーズ累計80万部を突破!SNS、ブログ、小説、日記…文章を書くときに直面する言葉の悩みを解決してくれる『ことば選び辞典®︎』シリーズ。
手のひらサイズの辞典だから、いつでも取り出せて、使いたい言葉をすぐに探せます。

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