古今東西

言語化

言語化とは…?
感情や感覚、直感的なイメージを言葉にし、伝えること。
自分の思い・考えを、相手に伝達するための手段であり、自身が理解されるために必要なこと。
自分のイメージや思考を、言葉にするため、
そして他者により正確に伝えるためには、相応の語彙力(ごいりょく)が必要となる。
どんなに豊かな感情や、深い思案があったとしても、
自分の語彙の範囲でしか言葉にすることはできない。
『古今東西』は、言語化という課題と常に共にあるコラムニストの感情と思考を読み解くことで、
まずは、思いをことばやかたちにする、すなわち言語化することの大切さを学ぶコーナーである。

つた-える【伝える】《他下一》

❶そのものが媒体となって、他のものに移す。
「金属はよく電流をー・える」「作者の意図を読者にー・える」❷ことばで知らせる。「出発の日時をー・える」「ニュースをー・える」❸仲立ちをとおして告げ知らせる。伝言する。「彼には君からー・えてくれ」類語 言付ける。❹先人からことばを受けついで今に残す。言い伝える。「沼に竜がすむとー・える」❺代々受けついできて、あとの者に・残す(教え授ける)。「昔の情緒を今にー・える町」❻〔ある物・物事を〕よそからもってきて、そこに届かせる。もたらす。「海外から新技術をー・える」
『学研 現代新国語辞典 改訂第六版』(2020)株式会社 学研プラス

column_No. 05

臼杵 照裕 Akihiro Usuki

ディライトワークス株式会社
マーケティング部 ジェネラルマネージャー

福岡県出⾝
地⽅広告代理店から株式会社BBDO J WEST(旧I&S)を経て、2006年 株式会社レベルファイブ⼊社。
2013年 株式会社レベルファイブ常務取締役就任。
同年発表され社会現象となった国⺠的ヒット『妖怪ウォッチ』の、ブームの裏側を⽀えた。
『レイトン教授』『イナズマイレブン』『ダンボール戦機』『⼆ノ国』『スナックワールド』ほか、多数の⼤ヒットコンテンツのマーケティング・プロモーションを主導し、成功に導く。
2019年スマートフォン向けゲーム『Fate / Grand Order』の開発・運営を⾏うディライトワークス株式会社⼊社。
新ゲームプロジェクト他、多数の新企画におけるマーケティング・プロモーションに携わる。

⾯⽩いほう。 ~ #広告業界 #ゲーム業界 ~

価値観は⼈それぞれ違います。⼈⽣において何を重視して、どちらを選択するか。
今、思い返してみると、私のサラリーマン⼈⽣は、と⾔ってもまだ現役真っ最中ですが(笑)、常に選択の繰り返しで、そのたび私は〝⾯⽩いほう〟を選んで来たような気がします。

TV局ディレクター VS 広告業界(職種未定)

中学から⼤学3年の秋まで、将来の夢は「TV局ディレクターになって⾯⽩い番組を創ること」でした。ところが⼤学3年の秋、ひき逃げ事故に遭って(結局、犯⼈は捕まりませんでした)3ヶ⽉半⼊院していた際、たまたま⽬にした宣伝会議という雑誌で、初めて広告業界のことを知りました。キッカケは⻄武百貨店の広告『おいしい⽣活』。⽷井重⾥さんの名コピーに映画監督ウッディ・アレンさんのビジュアルで展開されたこのシリーズは、まさに時代を席捲(せっけん)しました。〝TVに限らず、何の媒体やイベントでも⾯⽩いものを創れるチャンスがある〟広告業界の魅⼒にハマった私は、すぐに宣伝会議のコピーライター養成講座を受講し、卒業資格を取得した上で、広告業界に絞って就職活動を⾏いました。

⼤型クライアントの引継ぎ VS 新規クライアントの獲得

こうして地元の広告代理店に⼊社しましたが、「社会は厳しいものだ」と最初から頭に刷り込んで⼊社した私にとって、最初の半年は「こんなことで給料をもらっていいの?」「楽勝過ぎて申し訳ない」という気持ちでした。しかし、そんな楽勝⽣活も⻑くは続きません。研修期間を終え、サブ担当となったのは、当時勤めていた会社の売上トップ3に⼊る通販会社。先輩と⼆⼈で担当したのですが、いろいろな事情から⾯⽩い仕事にすることが難しく、早く担当から外れたいと考えるようになりました。そこで私は「このクライアントの売上を伸ばしながら、それを超える新規クライアントを多数獲得すれば、⾃分はそちらのメイン担当となり、結果的に担当変更してもらえる」と考え上司に進⾔。承認を得た上で、深夜・⼟⽇を使って新規獲得の企画を練っては⾃主的に提案。その結果、アサヒビール・TDK・ブリヂストン等の⼤型ナショナルクライアント(注1)を多数獲得でき、無事担当変更か…と思いきや、会社が出した結論は[⽀社への転勤]でした。
会社側の説明としては「⽀社のメインクライアントである某百貨店を担当し、売上を伸ばして欲しい」とのこと。そこで私は「あぁ、重要な約束を簡単に反故にするような会社では、これ以上⾯⽩い仕事はできそうにないな」と判断しましたが、恩も有ったので1年間は転勤に従いその百貨店の売上を⽴て直した後、当時の(株)I&S、現在の(株)BBDO J WEST という外資系広告代理店に転職しました。
(注1:全国で⾃社ブランドの製品を販売している予算規模の⼤きな広告主)


競合は少ないが保守的 VS 競合は多いが⾰新的

BBDO J WESTは、当時広告業界で売上世界⼀だった「オムニコムグループ」内の最⼤広告代理店ライン「BBDOワールドワイド」で、⻄⽇本エリアを担当する広告代理店でした。⽇本ではそれほど知られていませんが、海外の展⽰会ではロゴ⼊りの紙袋を持っているだけで多くの⽅々から話しかけていただけます。

そこでは管理職もやらせてもらったのですが、当時私が⽴てた⽅針は「競合が激しいかどうかではなく、⼤きな予算で⾯⽩いことが出来そうな企業に挑戦すべし!」でした。そこである電⼒会社の⾨を叩いたのですが、電通、博報堂など⼤⼿広告代理店を始め毎回⼗数社が競合プレゼンテーションで鎬を削るような環境でしたので、なかなか新規参⼊させてもらえません。思案した結果、私は部下を集め「来週から毎週1本、年間で50本の企画書を作成し、⾃主提案を⾏う!」と宣⾔しました。そして21本⽬を提案した時点で競合プレゼンに⼊れてもらえ、「オール電化」という⾯⽩い仕事で、当時⼈気を博していた森⾼千⾥さんを起⽤したプロモーションを展開させていただきました。

世界⼀にいること VS 世界⼀になること

その後、いろいろあって株式会社レベルファイブというゲームメーカーに転職したのですが、それも⽇野晃博さん(注2)という〝天才クリエイター〟と、⾯⽩いことが出来そうだと思ったからです。当時、ドラゴンクエストⅧの開発会社として有名だったレベルファイブですが、初の⾃社ブランド商品を発売(パブリッシング)するにあたり、⾃社でマーケティングや宣伝を⾏う必要がありました。そこに私が合流し、世に送り出した第1弾タイトルが『レイトン教授と不思議な町』。以降『イナズマイレブン』『ダンボール戦機』『⼆ノ国』、そして社会現象にもなった⼤ヒット作『妖怪ウォッチ』へと続いていきます(その他にも多くの作品がありました)。⽇野さんとの13年間は刺激に満ち溢れ「おもしろさ満点、波乱万丈!」の⽇々で、毎⽇が「今⽇何しよっか」とワクワクしながら友達と話した、夏休みのようでした。

⽇野さんはとにかく働き者です。レベルファイブ作品のほぼすべての原作を書き、アニメやマンガにも深く関わり、社⻑業もこなされていて、社員の誰よりも働いていました。たまに配信⽣番組に出演すると、視聴者から「⽇野寝ろ」という(お気遣い)コメントが殺到するほどです(笑)。

⼊社後に分かったことですが、私が履歴書に書いた「御社を世界No.1のエンターテイメントのブランドにしたい」という志望動機とほぼ同じこと(表現は多少違いますが)を、⽇野さんは私の⼊社以前から社員に⾔い続けてこられたそうです。偶然にも社⻑と同じ夢を⾒ながら⾛り続けられたことも、⾯⽩い仕事ができた⼀因でした。

⽇野さんも私も〝前代未聞〟という⾔葉が⼤好きで、常に前例の無いことにトライし、世の中を驚かせたいと考えていました。もちろん成功は前提としますが、ブレーキを踏み過ぎての失敗よりは、アクセルを踏み過ぎての失敗を選択する。その⽅が絶対⾯⽩いですから。
(注2:株式会社レベルファイブ代表取締役/CEO)

IPをたくさん持っている会社 VS IPをこれからたくさん創造する会社

幸い13年間で多くのIP(注3)を産み出すことができ、恩返しも出来たかなというタイミングで、昨年縁あって現職であるディライトワークス株式会社に転職し今に⾄ります。
https://www.delightworks.co.jp/
(注3:Intellectual Property/知的財産。ここではエンターテイメント系クロスメディアコンテンツ)

ディライトワークスは、AppAnnie社の調査で2018年、2019年に売上世界⼀となった『Fate/Grand Order』というスマホゲームの開発・運営を⾏っている会社であり、その⾼い技術⼒やノウハウを駆使して、現在、新ゲームプロジェクトを準備中です。
https://03-a.jp/

まさにこれから⾃社のIPを創出・育成していく過程であり、これまでの私の経験・ノウハウ・⼈脈を活かせるフェーズだと思っています。もちろん経験則だけではなく、⽇進⽉歩のマーケティングソリューション(注4)やターゲット層に合った最新トレンドなどを、半歩先んじて取り⼊れていくことも(⾒かけによらず)得意とするところです。
そう、これで⾯⽩いIPが⽣まれないわけがありません!夢はハッキリと⾔語化することで、より現実に近づくので⾔ってみました(笑)。
(注4:マーケティング上の問題・課題を解決する⼿法)

これからも、死ぬまで【⾯⽩いほう】に邁進し、世の中に【!】を提供し続けていきたいと思っています。