MAIKO×田沢あかね 気持ちを“伝える”ための美しいことば選び3 MAIKO×田沢あかね 気持ちを“伝える”ための美しいことば選び3
#03

今回の対談をおこなうにあたり、『言語化タイムズ』の読者から
“日常の会話”をテーマとしたメッセージや質問を募集した。
話し方ひとつで人に与える印象は大きく変わる。
日々の会話を円滑にし、人間関係を良好に保つ“美しいことば選び”について、
元Julietボーカル・MAIKOと『ことば選び辞典®︎』シリーズ担当編集者・田沢あかねが語った“ことば”を、全4回で紹介。
第3回は“会話のコツ”について読者から届いた質問にMAIKOと田沢が回答する。
※読者から届いた質問は、一部を除きそのまま掲載した。

一見何の問題もなく会話ができているようでも、自分のしゃべり方に課題を感じている人は少なくはない。日常生活を続けるうえで他者との会話は避けて通れないが、だからこそ様々なコツを知り実践することで、より良いコミュニケーションができるようになるだろう。

MAIKO:

ここからは皆さんからいただいた質問にお答えしていきたいと思います。

Q. 会話のスピードで気をつけたほうが良いことはありますか?

田沢あかね(以下田沢):

1分間におよそ300字程度の発話に抑えるとよいかと思います。実際の話し方では、私はMAIKOさんの間の取り方がすごく上手だなと思っているんですが、どうですか?

MAIKO:

ありがとうございます(笑)。そうですね…。自分が感じているよりも少しゆっくりしゃべるくらいでちょうどよいんだな、とは感じています。ラジオやTV、ライブのMCなどで話してきた経験則みたいなものですが。自分で録画をしながら気持ちゆっくりしゃべり、あとで見返すのが一番感覚をつかみやすい練習法だと思います。

⽥沢:

私も気をつけないと、早口でパパパっとしゃべってしまいがちなんですよね。身近な人に練習を見てもらうというのは、練習法としてはどうですか?

MAIKO:

それもよいと思いますよ。ただ見てもらった人に感想を求めると、個人の主観が入ってしまうことには注意が必要ですね。いきなり人に聞かせるよりは、まず自分で練習して細部を修正するのがオススメです。料理って、味見もせずに誰かに食べさせたら大失敗することもあるじゃないですか(笑)。まずは自分で味見をして、問題がなければ相手にふるまいますよね。それと同じです。

⽥沢:

そのたとえ、すごくわかりやすいですね!スッと理解できました。

MAIKO:

たまに「これ味見した?」みたいなものを出しちゃう人いますけどね…(笑)。動画を撮ると、言葉だけじゃなく仕草まで直せるのがよいんですよね。自分で見て恥ずかしいなと感じる部分を修正できるので。意外と目線がずっと斜め上に行っていたり、きょろきょろしていたりします。話し手が集中していないと、聞き手も話に集中できませんよね。私もあるんですよ。しゃべっているとき、口の開き方が左右で違うこととか。そういった自分の癖を知り、その都度修正することが話し方を上達させる近道です。

Q. ことばの引き出しが少なくて悩んでいます。

MAIKO:

以前、アーティストの方と二人でインスタライブをやったとき、私たちのやり取りを聞いたファンからメッセージをもらいました。その中に「お話を聞いていて、自分の言葉のバリエーションの少なさを感じました。」という感想があったんですよね。文面から察するに20代~30代くらいの子だと思うんですけど、友だちとの会話で「ヤバイ、すごい、えー!」みたいな言葉しか使ってないんですって。たしかに最近の若い世代の子たちは、「ヤバイ、すごい、えー!」を繰り返すことで会話が成り立ってしまっているイメージはあるかもしれませんね。

⽥沢:

たしかにその傾向はあるかもしれません。ただ、個人的にはそれも一概に否定するものでもないのかなとは思います。古語でも「いみじ」という言葉があって、これは“とてもよい”という意味にもなれば“とても悪い”という意味にもなる言葉なんです。どんな時代にも「とりあえず言っとけ」みたいな言葉はあります。しかしそれを使うことで、話が相手に伝わらなかったり誤解を招いてしまったりするようでは問題がありますよね。それを考えるとある程度言葉のストックを持っていた方が、自分の感情を整理してより正確に伝えられるというメリットがあると感じます。

MAIKO:

田沢さんはこれまでに語彙を増やすために心掛けてきたことはありますか?

⽥沢:

私は文字を読むのがとても好きなので、家にあるものを片っ端から読んできました。小説や漫画だけでなく、それこそ辞典や、電話帳なんかも読んでましたね…。

MAIKO:

電話帳!? 電話帳の何を読むんですか?

⽥沢:

氏名、住所、電話番号とかですかね…。「こんな地名・人名があるんだ」という発見がありますよ。おかげで難読地名なども読めるようになりました。

MAIKO:

へー!!

⽥沢:

弊社の宣伝になってしまいますが、『ことば選び辞典』シリーズはちょうど「言葉の引き出しを増やしたい!」というかたの悩みを解決するために作ったものです。困ったときにページをめくってみると「こんな言い回しがあるんだ」と新しい言葉との出会いがあるんじゃないかなと思います。シリーズはそれぞれ「こんな悩みのある人に」という想定にもとづいて収録する言葉を選んでいますので、ご自身の悩みに合った辞典をぜひ手に取っていただきたいですね。

MAIKO:

たとえば「使える言葉の種類が少ないな」と感じている人には、まずどの辞典がオススメですか?

⽥沢:

一番スタンダードなのは『ことば選び実用辞典』ですね。うまく気持ちを言い表せないという場合には『感情ことば選び辞典』または『和の感情ことば選び辞典』でしょうか。特に口頭で伝えるときは『和の感情ことば選び辞典』のほうが便利かもしれません。

MAIKO:

私、『和の感情ことば選び辞典』好きなんです。昔は辞典って好きじゃなかったんですけどね。勉強することがそもそも好きじゃなかったし…。でもこの『ことば選び辞典』シリーズと出会ってから「辞典を読むのって面白いんだ」って知りました。本当にぱらぱら斜め読みしてるだけで楽しいんですよ、漫画みたいで。移動中とか、サーフィンしてるときとか読んでます。

⽥沢:

サーフィン中に読むんですか?

MAIKO:

浜辺でね(笑)。ボードの上では読まないですよ!Juliet時代は、私たちがその時に感じている想いをことばにこめて歌詞を書いていたんですが、今は他のアーティストの依頼で書くことも多いんです。「こういう表現にしてください」っていうオーダーありきで書くこともあるので、私が知らない言葉も使わなきゃいけない。指定された言葉を知らなかったら書けないから、この辞典はとても役に立ってます。たとえば「“上手”ということを表すのに“あざやか”って表現もあるんだな」って、ひとつ調べればその隣の言葉も目に入りますよね。そんな風にどんどん先まで読んでいくうちに、自然と言葉の引き出しが増えていくんじゃないかと思います。最近は新聞を読んでいる人が減っているという話も聞きますけど、本や漫画などを通じて文章と接する機会が多い人ほど、言葉の引き出しが多いように感じますね。

⽥沢:

たしかに言葉に対するアンテナを立てている人は、引き出しが多い傾向にあると思いますね。本が苦手ならネットニュースで構いませんし、文字すら読みたくないなら人の会話に聞き耳を立てるのもありです。言語表現全般にアンテナを立ててさえいれば、表現の幅は広がっていくと思います。

Q. 私は人前で話すのが苦手で緊張してしまいます。何か対策はありますか?

⽥沢:

それは私も知りたいです。今まさに緊張しているので…。MAIKOさん、先ほど会話の練習法を教えてくださいましたが、これも練習すれば慣れるものですか?

MAIKO:

慣れは絶対に必要だと思います。でも慣れようにも機会がないですよね、家族を集めて聞いてもらうのも大変ですし。本番が始まる前はいろんな人が自分を見てるように感じても、いざ始まると意外と感じなかったりするんですが。
人がワーッと集まってると、たまたま目が合ってしまう人もいますが、あまり「みんな私を見てる!」って感じではないかもしれません。緊張を楽しめるようになるにはどうすればいいのかな…。

⽥沢:

私はなかなか緊張を楽しめるほど強くはなれないですね…。実は今日家を出るときも、3回その場でジャンプをしてから来ました。個人的な儀式みたいなもので、体を動かすと緊張が少しやわらぐ気がするんです。体が温まって意識がそれるのか、原理は分かりませんが。ジャンプしたり、歩き回ったりしています。

MAIKO:

ああー、そういう自分なりのルーティンみたいなものを決めておいて、平常心を保つというのはよいですね。私はオーディションのときなどは、聞いている審査員の中から「この人は優しそうだな」と感じる人を見つけて、その人に集中して伝えようという気持ちでやってました。
案外、ひとりにでも思いが伝われば、それが周りにも伝わっていくんですよね。はじめからその場の全員に分かってもらおうというのは、無理があるんじゃないかと思います。

何も意識していなくても会話をすることはできる。しかし自身の意図を正確に伝え、スムーズなコミュニケーションを成立させようと思うと、さまざまな注意点やコツがある。すべてのポイントを一度に実行するのは難しいかもしれないが、ひとつひとつを意識し続けることで、おのずと自分の話し方が洗練されていくだろう。
最終回となる第4回もMAIKOと田沢が読者からの質問に答える。またMAIKOと田沢がオススメする『ことば選び辞典』シリーズ(学研プラス)も紹介。全4回の対談をしめくくる。

Profile

  • 田沢あかね

    2014年、学研教育出版(現・学研プラス)に入社。80万部以上というコンパクト辞典としては異例の大ヒットを飛ばした『ことば選び辞典®︎』シリーズの編集を担当する。静岡県出身。母校である京都大学大学院では、言葉への興味から『平家物語』『保元物語』の研究を深める。幼いころは文字を読むことが好きすぎて、食品パッケージや電話帳までひたすら読みこんでいたという重度の蠹書蟲。好きなものは、古典と妖怪とコミック全般。

    2014年、学研教育出版(現・学研プラス)に入社。80万部以上というコンパクト辞典としては異例の大ヒットを飛ばした『ことば選び辞典®︎』シリーズの編集を担当する。静岡県出身。母校である京都大学大学院では、言葉への興味から『平家物語』『保元物語』の研究を深める。幼いころは文字を読むことが好きすぎて、食品パッケージや電話帳までひたすら読みこんでいたという重度の蠹書蟲。好きなものは、古典と妖怪とコミック全般。

  • MAIKO

    2009年Julietのメンバーとしてデビュー。同年リリースした「ナツラブ」「フユラブ」は多くの若者の恋心の代弁歌として大ヒット。2018年、約10年間のグループ活動を終え、現在はアーティストのレコーディングコーラスや、サーフ系ファッションブランドROXY GIRLSとして様々なイベントへ参加中。

    2009年Julietのメンバーとしてデビュー。同年リリースした「ナツラブ」「フユラブ」は多くの若者の恋心の代弁歌として大ヒット。2018年、約10年間のグループ活動を終え、現在はアーティストのレコーディングコーラスや、サーフ系ファッションブランドROXY GIRLSとして様々なイベントへ参加中。

『ことば選び辞典®︎』シリーズ

『ことば選び辞典®︎』シリーズ

シリーズ累計80万部を突破!SNS、ブログ、小説、日記…文章を書くときに直面する言葉の悩みを解決してくれる『ことば選び辞典®︎』シリーズ。
手のひらサイズの辞典だから、いつでも取り出せて、使いたい言葉をすぐに探せます。

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